筑波技術大学
建築系コース
Tsukuba University of Technology
Department of Architecture Course

最優秀賞受賞!おおくまハチドリプロジェクト

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大学院1年生の木村結衣です。

私は、原発被災地である福島県大熊町を対象に、現地に残る空き施設や空き家などのストックを活用しながら、生活再建を行う可能性について探る研究をしています。今回、研究の一環として、「おおくまハチドリプロジェクト」という大学生や高校生らによるアイデアソンプロジェクトに参加し、この度、9月22日に開催された最終発表会で、最優秀賞を受賞することができました。以下、その概要について報告します。

現状:居住可能なエリアは町全体の半分程
大熊町は2011年3月11日の東日本大震災時、一時は町全体が避難の対象となった自治体です。2019年4月以降、順次居住制限が解除されていますが、人口は震災前の1割程度、居住することができるエリアは、町全体の半分程にとどまります。しかし、公営住宅や町役場の新設、さらに2023年には、全国的にも珍しい認定こども園と義務教育学校の子どもたちが共に学ぶ「学び舎 ゆめの森」が開校し、今現在、若い世帯を中心に町民が増えているようです。

問題意識:医療福祉サービスに不安・震災前の街並みが姿を消しつつある
総合病院の再開が2029年度に予定されていますが、今現在はまだ医療福祉施設は不足していると言われています。実際に、高齢者や乳幼児を抱える町民の中には、町外の病院や施設へ通う人もいることが、インタビュー調査を通してわかりました。
また、震災前の街並みは姿を消しつつあります。公共施設だけでなく、多くの住宅の解体が進んでいます。除染のため、また長期の避難生活で管理ができなかったことなどが原因の一つです。

提案:空き空間×福祉
大熊町の中では珍しい既存改修により、震災前からの雰囲気を残した公共施設、大熊町保健センターを活用した提案です。今年2024年7月に再開した平屋の建物であり、広々として天井の高いホールや大人数が集まれる和室、和室と連続した調理室、広い軒下空間や駐車場など豊かな空間を備えています。しかしながら、職員のマンパワー不足により、月に1回開放するのみであり、町民の認知度もまだまだ低いです。
そこで、私が提案したのは、この保健センターの空き空間(未使用空間)を活用した福祉の充実を目指す企画です。
この企画は、4つのステップで構成しており、1.存在を知る、2.活用する、3.活動する、4.拠点作りです。今回はまず最初の1ヶ月半で、大熊町保健センターの存在を知ってもらうために、町民の声を聞き、健康づくりや拠点化に向けた使い方を一緒に検討するワークショップを実施しました。若者から高齢者まで7名の方の声を聞くことができ、2.活用するに向けたヒントを得ることができました。

審査員の方からは、1ヶ月半という短い期間にも関わらず成果発表会までに一つの形として作り上げたこと、現状の大熊町の背景を読み取り、それに対してこういう提案をしたいという因果関係がわかりやすく、説明内容に非常に説得力が高かったことについて、高評価をいただきました。
私自身は、このプロジェクトを通して、多くの大熊町民の方のお話を聞くことができ、いろいろと学ばさせていただきました。引き続き、研究に励みます。